お酒が好きで、強いと有名な宮古島の方々。そんな宮古島に昔から伝わる「オトーリ」という風習があります。その起源は、なんと琉球王朝時代までさかのぼるのだとか。どのようなキッカケでオトーリが始まったのか、どのようなルールがあるのかなど、詳しく見ていきましょう。
「オトーリ」って何?宮古島の風習「オトーリ」について
沖縄県民はお酒が好きなことで知られていますが、その中でも特にお酒が強く好きな方が多いと言われているのが「宮古島の方々」なんです。
国立がんセンターの研究では、宮古地域の男性の一日平均飲酒量は、他の地域と比べて多く、また多量飲酒者の割合が沖縄本島の約4倍、全国の約5倍もいる事が分かっているんです。それほどお酒が大好きな県民性なんです。
そんな宮古島出身の方がお酒の席で行う事で有名な事・・・それは「オトーリ(御通り)」です。
聞いた事はあるけど、実際にはどんな事が行われるのかわからない・・・なんて方もいらっしゃるかもしれません。
「宮古島への移住を考えている」「転勤の予定がある」「友人がいるので会いに行く」など、今後・・・宮古島でお酒を飲む可能性がある方は、宮古島の風習である「オトーリ」について知っておいてくださいね!
オトーリ(御通り)の歴史を知っておこう!
オトーリは、なんと琉球王朝時代に、中国から伝わった中国式の乾杯法なのだそう・・・。琉球王府時代の沖縄では、穀物の生産量がとても少なかった為、泡盛は首里でのみ製造を許可されていました。その為、泡盛はとても貴重なお酒だったそうです。
オトーリは、その貴重な泡盛を、参加者全員に均等に行き渡らせる為に行われていた飲み方なのです。琉球王朝時代には、宮古島の一部で流行していたオトーリですが、現代では宮古島全体で行われる風習へと変わっていきました。
オトーリ(御通り)って何?
宮古島には、昔から「オトーリ」という風習があります。
オトーリとは、まず親を決め、その方がコップに継いだお酒を順番に飲み干していくというものになります。詳しいルールは下の画像をご覧ください。
お酒を注がれている途中で喋ってしまうと、オトーリのルール違反になってしまうそうです。沖縄本島で見かけるオトーリは、このルール通りにやっている方は少なく、ワイワイと楽しい雰囲気で行われていることが多いです。
また、円になって座り、オトーリを行うのですが、オトーリを回す方向でも意味が変わるそうなのです。
- 時計回り:豊年まわり
- 反時計周り:大漁まわり
農家さん達の集まりの場合は、時計回りで行い、漁師さんが集まる場合には、反時計回りに回すのが決まりなのだそうですが、主催者やメンバーによっても変わり、目上の方から回すといった場合などもあるそうで、みなさん独自のルールなどをお持ちのようです。
オトーリをしている方の性別や年齢などは?
「オトーリ」と聞くと、どのような年代や性別を思い浮かべますか?宮古保健所が調査した様々な結果をもとに、最近のオトーリ事情を見ていきましょう!
オトーリをしている方々は、やはり男性が多いようです。その男性たちは、全員が宮古島の出身という訳ではなく、宮古島の出身でない方も多いという事が分かっています。
また、宮古島出身の40代から50代の男性は月に2回以上、40代の12.5%が月に2~4回ものオトーリをしている事が明らかになっています。
一体、どのようなときにオトーリをしているのか気になりませんか?
どんな時にオトーリが行われるの?
- 祝い事の席
- 会社の飲み会
- 模合
- 親族が多く集まった時 など・・・。
そして、オトーリをやっている方に「オトーリが好きか嫌いか」という質問をしています。
そちらの統計によると、20代・30代・50代以上の方の約3割が「嫌い」「どちらかというと嫌い」と答えています。県外からの移住者の場合、20代・30代・50代以上の方の半数以上が「嫌い」「どちらかというと嫌い」と答えています。
統計的にみると、宮古島出身・以外の出身者どちらも、40代の世代は「オトーリ」が好きな方が多いようです。
飲酒量を減らしたいかという質問に対しては、年代が上がるごとに「飲酒量を減らしたい」と考える男性が多いようです。健康面が気になる一方で、楽しいお酒がやめられないのが本音といったところでしょうか。
オトーリをお断りしたい時のカードがある!?
中には、「オトーリを断りたいけど断りづらい・・・。」「これ以上飲めないけど、まだまだ流れがとまらない」など、お酒が弱く飲めない方や、持病などであまりお酒を飲むことが出来ない方がいたりしますが、断りづらい事が多く、最後まで続けてしまう方も多いのだとか。
そんな方の為に、宮古保健所が発行しているカードがあるのでご紹介したいと思います。
オトーリカード
宮古保健所は、断り切れない付き合い酒を断りやすくするための「オトーリカード」というものを発行しています。平成26年までの10年間で累計618枚発行しました。年々、申込者も増加傾向にあるそうです。
27年度までは、オトーリカード(レッド・イエロー)というカードを交付していましたが、その後「新オトーリカード」として、新しくリニューアルしています。
以前の「オトーリカード(レッド・イエロー)」は、「レッドカード」「イエローカード」に分かれていたそうですが、現在交付している「新オトーリカード」は黄色の一種類となっています。
裏面には適正飲酒量が記載されており、一日の摂取量の目安が分かりやすく表記されています。
新オトーリカードの申込方法とは?
カード発行を希望される方は、以下の場所で申請をお願いいたします。
新オトーリカードの申込み
- 申込み場所
宮古保健所
- 受付時間
平日の9時~11時・13時~16時
- 所要時間
20分程度
- 金額
無料
新オトーリカードを発行してもらえるまでの時間は、大体20分程度なのだそう。カードを発行してもらうためには・・・
- AUDIT(お酒の飲み方チェック)を記入
- AUDITの合計点数について保健指導を受ける
といった手順を踏む必要があります。新オトーリカードを発行した方の多くの方は保健指導を受けた結果なのか、飲酒量が減少するなどいい傾向がみられているそうです。
こんな方は新オトーリカードを作っておこう!
宮古保健所は、以下のような経験がある方は、オトーリカードを発行するよう呼びかけています。
- 路上寝の経験がある
- お酒が飲めない(弱い)体質
- 実は医者にお酒を控えるように言われている
- 正直・・・付き合い酒はつらい
路上寝に関する交通事故がとても多いと言われている沖縄県。家に帰る事が出来ない程、お酒を飲んでしまった経験がある方は、是非とも新オトーリカードを発行しておきましょう。
路上寝に関する事故は、ひかれた側も可哀想ですが・・・ひいてしまった側も気の毒ですし、ある意味 被害者だと思います。人が寝る場所ではないところに、人が寝ており誤って轢いてしまう・・・。どちらにとっても、不幸な事故だと思います。
鹿児島県の与論島でもオトーリに似た習慣がある!?
鹿児島県の与論島にもオトーリと同じような風習があるのはご存知でしょうか?
「与論献奉(よろんけんぽう)」という名前で、流れはオトーリそのもの!
まず、一人が口上(挨拶・自己紹介・感謝の気持ちなど)を述べ、コップにお酒を注ぎ、隣の方へ。隣の方は一気に飲み干し、コップを戻します。このように、どんどん隣へ回し、一周すると、次は口上を述べた方の隣の方が、口上を述べ二週目が始まります。
本当にオトーリとそっくりな風習ですよね。与論島は、「鹿児島県ではなく沖縄なのでは!?」と思ってしまうほど、沖縄と同じような文化が多く見受けられるので、とても親近感がわきます。
宮古島出身の方と、与論島出身の方がオトーリをしたら・・・大変なことになりそうですね。どちらがアルコールに強いのかの勝負が始まっちゃいそうです。
「これ以上飲めない!」という時には断る勇気を!
多量飲酒者が、他県や沖縄本島に比べて・・・とても多いと言われている宮古島。
少しのお酒は、ストレス発散などのいい効果もありますが、多量飲酒に関しては病気のリスクが高くなったり、生活面に悪い影響を及ぼすこともあるそうです。
多量飲酒でリスクを高めてしまう病気とは?
- 咽頭・食道・大腸がん
- 認知症
- 肝硬変
- 糖尿病
- 意識障害
- うつ病
- アルコール依存症 など・・・
多量飲酒で起こる生活面の変化とは?
- 仕事能率の低下
- 夫婦の不仲
- 経済的問題
- 事故 など・・・
宮古島に住んでいる方や、移住を考えている方は、付き合いでオトーリに参加しなければいけない場合もあるでしょう。
「ノリが悪いと思われたくない」「ルールだから」「場の空気を壊したくない」と無理して飲んでいる方もいらっしゃるようですが、実際にはオトーリで起こる「急性アルコール中毒」も問題になっています。自分自身の気持ちや、体調・気分などは、自分自身でしか気づけません。
「もう無理だ」「飲みたくない」という場合には、流されずに断る勇気を持ちましょう。
盛り上がると、どんどんお酒を進めてしまう方もいます。無理してお酒を飲まず、自分の身は自分で守りましょう!自分で止めなければ、誰も止めてはくれませんよ!
大学時代に宮古出身の子達と一緒に飲んだことがあります。当たり前のようにオトーリが始まり、私も参加させてもらいましたが「しゃべってはいけない」などのルールはなく、ワイワイとした感じで盛り上がっていました。全員が親になるまで続ける・・・という事もなく、ある程度 酔っぱらう頃には自然と終わっていました。