沖縄に移住を考える時に「もしもの時の医療体制」を気にする人も多いはずです。でも、意外と知られていないのが沖縄の救急医療体制のこと。実は、沖縄の救急医療体制は全国でもトップクラスなのです。
今回は、以前ご紹介した記事を、更に深掘りしていきたいと思います。
沖縄の救急医療はアメリカのER体制が基本
沖縄を除く、全国の救急医療の現場では、患者の重症度によって受け入れ病院が指定されているのが一般的です。重症度は「一次救急」「二次救急」「三次救急」に分かれていて、受け入れが出来る病院もあらかじめ指定されています。
ですから、救急病院に受診しても診療できる範囲が異なっている場合には受け入れてもらうことが出来ません。
しかも、この体制の一番の問題は「利用者が理解しにくい」という点があります。ただし、救急病院を受診するほどの状況となれば、利用する側にとってみれば…どれも「急を要する症状」としか考えません。
ところが、この3つの段階にはきちんとした判断基準があります。
まず「一次救急」は患者の症状が軽症であることを意味します。そして症状が重症化するほど「二次救急」「三次救急」となっていきます。
ですから最初に受診した病院の対応している症状のレベルと違っている場合は、症状(重症度)に対応している病院に転送されることになります。
これが「病院のたらいまわし」という深刻な問題の原因の一つになります。
ところが、沖縄の救急医療はアメリカのER体制が基本にあります。
ER体制は、症状の重症度に関係なくすべての患者の救急初期診療を受け入れています。ですから24時間・365日希望する救急病院への受診が可能です。
沖縄で一般的なER体制の救急システムとは?
病院のたらいまわしが起こりにくい沖縄の背景にはER体制があるといいましたが、実際にどんな救急体制なのかがイメージできないという人も多いはずです。
そこでもう少し詳しく、沖縄の救急体制について説明してみましょう。
まず沖縄の救急病院を受診すると、最初に「トリアージナース」と呼ばれる担当スタッフが症状の確認をします。沖縄のER体制にとってトリアージナースの役割はとても重要です。
たとえば、救急病院まで自分でやってきたとしましょう。
一般の利用者の視線で見ると「自分で病院まで来ることが出来るのだから、救急車を依頼する患者よりも症状は軽いのでは?」と思うはずです。
でも…自分で病院までくることが出来たとしても、実はすぐに緊急治療を必要とする症状を引き起こしている可能性もあります。逆に、救急車で病院に運ばれても、症状としては重症度の低い患者さんもいます。
このように、救急病院に来院した患者の症状の重症度を的確に判断し、専門の医師の診察を受ける優先順位を決めていくのが「トリアージナース」の重要な役目です。
移住者の場合、ERのシステムに初めは戸惑う人が多い
このシステムが定着している沖縄では、救急病院以外でもトリアージナースによる症状の確認が一般的です。
ですから、救急病院で診察の順番が前後することに対して違和感を持っていません。
ただ、沖縄移住者にとって沖縄のER体制は馴染みが薄いですので、初め救急病院を受診した時に違和感を持つ人もいます。
「なんで自分の方が先に受付をしたのに、後から来た患者の方が先に診察を受けられるんだ?」
…と、イライラする人も多いんです。
その気持ちも理解出来るのですが、逆の立場で考えてみてください。
自分が一刻を争う状態の時に、悠長に順番待ちなんてしていられませんよね!緊急度によって、順番を繰り上げてもらえるシステムがあるからこそ、助かる命もあるというわけなんです。
トリアージナースによって患者の優先順位が決められる沖縄のER体制があるからこそ、24時間いつでも安心して病院を受診することが出来るのです。
トリアージナースが判断する緊急区分は5段階ある
トリアージナースが診療の優先順位を決める時、5段階の緊急度判定が行われます。
緊急度判定には「蘇生」「緊急」「準緊急」「低緊急」「非緊急」があります。
最も緊急性が高いのは「蘇生」レベルで、この判定が出された患者さんは「一刻も早く医師による診察および治療が必要」とされます。ですから、トリアージナースによってその判断が下された患者さんは、病院到着の順位を問わず最優先で診察・治療が行われます。
ちなみに、最も緊急度が低いのが「非緊急」レベルです。このレベルは「2時間(120分)以内の診察・治療が必要」と判断されます。
もちろんその判定は2時間ごとに再評価されます。再評価された時点で緊急レベルが高くなった場合は、判定された基準に基づいて診察・治療が行われます。
沖縄の医療体制は移住者が思っている以上に充実している
「沖縄は田舎だから都会のような医療を受けられないかもしれない」と不安を感じて移住に踏み切れない人もいるかもしれませんが、「いつでも病院を受診できる環境が沖縄にはある」ということが分かれば、その不安も半減するのではないでしょうか?
移住すれば、医療体制の充実は住環境と同じくらい大切なことです。
全国でもトップクラスといわれる沖縄の救急医療体制は、沖縄への移住を考えている人の心強い味方になるはずです。
そのため、沖縄では全国的に問題になっている「病院のたらいまわし」が起こりにくいのです。