沖縄土産としても有名なシークワーサーは、琉球諸島や台湾に自生する柑橘類の果実です。そんなシークワーサーに認知症予防効果があることが、近年の研究で証明されました。そこで新たに証明されたシークワーサーの認知症予防効果をわかりやすく解説します。
シークワーサーって何?
シークワーサー(シークヮーサー)は、「平実檸檬(ヒラミレモン)」の沖縄方言名です。
沖縄県内ではどこでも見られる柑橘類で、完熟するとオレンジ色になりますが、通常は未熟な緑色の状態で食べます。
緑色の未熟なシークワーサーは、非常に酸味が強いです。そのため「酢食わせ」が訛り、沖縄ではシークワーサーと呼ばれるようになりました。
シークワーサーのどんな成分が認知症予防に役立つ?
シークワーサー(未熟果)には、ノビレチンと呼ばれる成分が豊富に含まれています。
このシークワーサーのノビレチンが、認知症予防に役立つことを、今回紹介する研究が証明しました。
ただし、シークワーサーのノビレチンを、生の状態で摂取するのは難しいです。
シークワーサーのノビレチンは、実の部分(可食部)よりも、外側の皮(フラベド)や白い皮(アルベド)の方が多いです。
シークワーサー100gあたりのノビレチンの量を比べてみると、実の部分が2.5mgなのに対し、外側の皮は122mg、白い皮でも41.0mgあります。
しかもシークワーサーの産地である沖縄でも、皮を積極的に食べることは基本的にありません。
そのため生のシークワーサーでノビレチンを補うとなれば、相当数のシークワーサーを食べる必要があります。
シークワーサーでどんな症状が改善する?
認知症の症状には、記憶障害、見当識障害、理解・判断力障害、実行機能障害、失語・失認・失行障害があります。
今回の研究で認知症の改善効果が証明されたのは、記憶障害です。
周辺症状の改善に効果はあるの?
シークワーサーで改善に効果があることが分かったのは、「中核症状」の一部です。
中核症状というのは、認知症を発症すれば誰でも体験する症状のことで、記憶障害もその一つに含まれます。ただし認知症の症状は、中核症状のほかに周辺症状(心理症状ともいう)もあります。
認知症の初期段階でよくみられるのは、認知症による不安・抑うつ状態です。
不安・抑うつ状態は認知症の初期段階でも見られる症状ですが、うつ病と見分けることが難しく、認知症がきっかけでうつ病を併発してしまうケースも珍しくありません。
ただ、介護者にとって不安・抑うつより対処が難しいのが、徘徊、物盗られ妄想、せん妄、弄便(ろうべん)、失禁、暴力・暴言、異食、帰宅願望、睡眠障害です。
これらの症状がみられる場合、同居して介護する家族には大きな精神的負担がかかります。
このような認知症の周辺症状の研究は進められていますが、症状が多岐にわたることもあり、特効薬となるものはまだありません。
また今回改善効果が証明されたシークワーサーも、認知症の周辺症状に対する効果はまだ証明されていません。
認知症予防効果はどうやって証明したの?
以前から民間レベルでは、「シークワーサーに含まれるノビレチンには認知症の予防に効果がある」といわれてきました。
そこでそのことを証明するために、65歳以上で「最近物忘れが多くなったことを自覚している認知症予備軍」を対象に人試験を行いました。
この研究は、沖縄県内のバイオベンチャー企業「沖縄リサーチセンター」が、沖縄県の産官連携製品開発支援事業を活用して行いました。
専門研究機関として共同研究に参加したのが、静岡県立大学の山田教授と琉球大学の照屋教授です。
人試験は被験者108人、試験期間は4ヶ月。
人試験ではノビレチンを含む健康補助食品を与えるグループ、もう一つはノビレチンを含まない健康補助食品与えるグループに分けました。
そして両グループとも与えられた健康補助食品を一日一回服用し、4か月後に認知機能検査を実施します。
試験期間が終わり認知機能検査をしてみると、検査結果に明らかな違いが現れます。
ノビレチンを含む健康補助食品を4か月間服用し続けたグループは、スコアの平均値が試験前より9ポイント上がりました。もちろん、ノビレチンを含まない健康補助食品を服用したグループも、認知機能検査のスコアは上がりました。
ただし、上昇率はノビレチンを服用したグループのほうが、服用していないグループより3.1ポイント高かったのです。
ポイントの上昇内容を詳しく調べてみると、言語性記憶と視覚性記憶のスコアが集中して上昇していることがわかりました。
言語性記憶とは?
言葉を記憶することをいいます。
「家族との会話の内容を覚えている」「話をしていたときに考えていたことを覚えている」などは、言語性記憶の代表例です。
言語性記憶には場所や状況の記憶は関係ありません。あくまでも「言葉として表現できるもの」に限ります。
視覚性記憶とは?
風景や図形など形そのものを記憶することをいいます。
「誰と旅行に行ったかは覚えていないが、その時見た風景を記憶している」「パズルができる(図形を理解している)」などが、視覚性記憶の代表的な例です。
【まとめ】現在は、機能性表示食品認定を目指している段階
これまで「シークワーサーのノビレチンは認知症にも効果がある」とは言われていましたが、人試験を実施しその効果を証明することができたのは、今回が初めてです。
今後は沖縄リサーチセンターが販売するノビレチンを含んだ健康補助食品を、機能性表示食品として受理されるよう、消費者庁に申請する予定です。
健康補助食品になれば、個人でも安心して購入ができます。
また毎日の生活習慣として取り入れることで、認知症の中核症状である記憶障害の予防が手軽にできるようになることでしょう。