霊を透視するというテレビのスペシャル番組などで、たまーに出てくることがある沖縄の「ユタ」という存在をご存知でしょうか?亡くなった方と話が出来たり、悩んでいる時に道を示してくれる存在なのですが、ユタになるにはどうしたらいいのか、ユタはどういう事ができるのかを見ていきましょう。
沖縄のシャーマン「ユタ」って何!?
あなたの周りに「霊感がある」「霊が見えるんだ」という人って、ひとりはいませんか?
実際に見えていない自分たちにとっては「ふーん」という程度で済ましてしまうような、一見なんともないことだと思います。しかし、世の中には実際のところがまだまだわかっていないことが多く、やはり霊は実在するのではないかともよく言われていますよね。
そんな霊や神様の世界を見聞きし、私たちにさまざまな助言・祈祷・除霊などを行ってくれるのが「シャーマン」と呼ばれる人たちです。シャーマンの仲間として、日本では巫女さんやイタコ、陰陽師(おんみょうじ)などさまざまな呼び方をしています。
そして、実は沖縄にも独特の呼び方をする霊媒師「ユタ」という方がいます。特におじいちゃん・おばあちゃん世代にユタを信じている方が多く、沖縄で上手く人付き合いをしていく上で「ユタを信じる・信じないという話は気軽に口にしてはいけない」とも言われています。そんなユタという人たちですが、いったいどんな人なのでしょうか・・・?
ユタの歴史、ユタについて
ユタというのは、沖縄県と鹿児島県の奄美群島の霊媒師のことをいいます。
沖縄では琉球王国の時代、祭事を取り扱うのは女性でこの人のことを祝女(のろ)と呼んでいました。対して琉球王国時代から同じように活動していたユタは、神様からのお告げを聞いて災いや病を避ける・克服する方法を聞いていた存在です。
ただ、琉球王国が終わり沖縄となってからは、ユタがまるで魔女のような扱いをうけてユタ狩りやユタ禁止とされてきました。
ユタが神様からのメッセージを読み取り、相談者に伝えることを「判示(はんじ)」と呼びます。判示の内容次第では、この人は偽物のユタ・・・?と疑うこともあるかと思います。悲しいことに偽物のユタが多いのも事実ですし、それに惑わされてしまうことでお金をだまし取られて人生がめちゃくちゃという人もいるんです。
本来のユタであれば、神様からのメッセージをきちんと受け取り「供養をきちんと行うように」や「○○をしなさい」などと具体的に対処法を教えてくれます。しかし、偽物のユタの場合はよくある霊感商法のように「これを買って肌身離さず持っておきなさい」など、高額な商品を売りつけられるケースもあるので注意しましょう。
どんな人がユタになるの?
「ユタになるためには、何をしたら良いの?」と興味をもつ人もいらっしゃると思います。
しかしユタは、なりたいからなるというものではありません。ユタになる運命は生まれたときから決まっていると言われていて、さらにそれは遺伝すると言われています。つまり、霊力の強いユタの家系に生まれるしかないということですね。
「性高い生まれ」という意味をもつ「サーダカンマリ」であるという理由から、自分はユタになる運命なんだとわかるそうです。こればかりはユタ本人にしかわからない感覚なのでしょう。
この感覚から、ユタの人にはまずさまざまな症状が起こります。幻覚などが見える行動を沖縄ではターリィと言うそうなのですが、ユタの人が幻覚などを起こす場合は神様に関係することですので「カミダーリィ」といいます。
カミダーリィの際には高熱、幻覚、精神的・肉体的な不調が続くと言われています。そのため、パニック障害やうつ病のような症状が起こるためにユタとは知らず心療内科を訪れるということも。しかし沖縄では、このような症状で心療内科を訪れたときに「ユタに診てもらいなさい」と言われるパターンもあるんだとか・・・。
原因不明でどうしてこんな症状が起こっているかわからない、だから除霊などをしてももちろん良くならないのが、ユタに起こるカミダーリィです。つまり、ユタの人にとってカミダーリィは神様からの試練と言うことですね。
一見、カミダーリィが起こっても本土であれば「精神的な病気じゃないの・・・?」なんて思ってしまいますが、カミダーリィが起こっていくうちに神や神様の使者よりお告げやお知らせを受けるといいます。そこでユタになる、つまり神事を行う神の道に入らなければカミダーリィは良くならないと言われています。
ユタになるために、すでにユタとなっている人のもとへ行き、ユタになるための方法を教えてもらいます。ユタになるためには、沖縄各地にある修行場へ行って祈りをささげたりお経をあげたり、これをずっと繰り返していきます。
ユタの修行場ってどんなところ?
ユタになるために行く修行場ですが、まずユタ見習いである「ナライユタ」の人は、カミダーリィが起きているときにどの修行場に行けば良いかというお告げを受けるそうです。
ユタの修行場は主に3か所。もちろん、どれも沖縄県内にあります。
森川公園
宜野湾市にあり、那覇からは車で約30分ほどの場所。ブランコなどの遊具や泉もあり、子どもが水遊びを楽しむことができるような場所になっています。
ただ、ここは修行場(拝所)と言うよりも、天女の伝説が残るパワースポットだと言われています。そのため遠足地にも選ばれていますし、神聖な場所として知られているようです。
大山貝塚
ここは沖縄の中でも1、2を争う霊域です。
森川公園はユタの修行場というより神聖な場所として認識されていますが、こちらは本物の修行場。霊が非常に多い場所だと言われていて、ユタはここで霊とコミュニケーションをとり、神様からのお告げをより聞くことができるように修行をしていきます。
この場所は興味本位で冗談半分肝試しで行くという若者が多いと言われていますが、いわゆる心霊スポットとして数えきれないほどのエピソードがあります。それほどまでに多くの事例があるため、ユタの人であっても覚悟を決めていかなくてはならないとも言われているほど強力な霊場だそうです。
祠(ほこら)があり、その横に狭い洞窟があるそう。その向こう側は「死の世界」とも呼ばれていて、まさに霊が住む場所になっています。「霊域なので遊ばないように」という看板もあると言われています。
SSS(スリーエス)
こちらも、大山貝塚と同じように非常に強い霊域だと言われている場所。SSSというのは、S字カーブが続く道に「SSS」とスプレーで書かれていたことをきっかけに、そう呼ばれるようになったそうです。
一見、こんなところにそんな霊域が?と思うような場所にあり、坂道を上っていくと突然縄で囲まれた森のような場所があらわれます。入ってみると真っ赤な看板で「これより先の立ち入りを禁じます」と書いてあります。
中には拝殿があり、ここで御嶽(うたき)をすると言われています。御嶽というのは神様がやってくる場所、つまりユタなどのシャーマンたちはここで神様に向かって祈願をするという神聖な場所です。おもしろ半分でSSSへ行き、何もなかったという声の方が少ないとも言われています。
こういった例の集まる場所へ行き、霊への耐性をつけたり霊とコミュニケーションをする、お告げを聞くことができるように修行をする・・・というのです。 ふつうなら恐ろしくてなかなかできないことですが、ユタになるためにはこのような修行を約3年も続けなくてはならないと言われています。(期間は個人差があります)
偽物のユタに騙されないよう注意
考え方として、ユタはあくまで沖縄の霊を慰める存在だということ。
だから、本土の人が沖縄旅行のついでに占いや手相を見てもらう感覚でユタに会おうとすると「当たらなかった~」などという結果になると言われています。実際、偽物のユタはとても多く、金銭面でのトラブルになったり宗教のようにのめりこんでしまったり・・・というトラブルが起こっています。
お金をだまし取られたという人も少なくありませんので、大々的にユタです!と看板を掲げている人はあくまで「商売」でのユタだと思っても良いでしょう。
本当のユタはそういった営利目的ではなく霊を鎮め、神様からのお告げを人々に伝え、未来におこることを予測していくということです。
本当に人々の助けになるよう助言をしてくれるのが、本来のユタだということを忘れないでくださいね。
現在でもまだユタを信じ崇めている人もとても多く、沖縄以外の場所でもユタに会いたい・相談に乗ってほしいという人が多いんです。