沖縄の行事の一つであるムーチーの日。ムーチーの日は家族の健康を祈願する行事だという事は広く知られています。ムーチーの日は鬼餅とも言われておりますが、なぜ鬼餅と言われているかご存知でしょうか?
お餅の昔話が恐ろしいって!?
沖縄ではお正月をはじめ寒い時期に縁起物として、お餅を食べます。このお餅のことを「ムーチー」と言うのですが、「餅」もしくは「鬼餅」と書きます。お餅を方言でムーチーというのはなんとなくわかりますが、なぜ「鬼餅」と言われるようになったのでしょうか?
実は、沖縄本島の民話・つまり昔話に由来すると言われています。昔話というと、お母さんが寝る前に子どもに本を読んであげたりなど…のほほんとしたイメージがありますよね。ですが、このムーチーに関する民話はとってもおそろしい話が隠されているというのです…。
ムーチー(カーサムーチー)について
ムーチーはショウガ科の植物であるサンニン(月桃・げっとう)の葉っぱで、包んだお餅のことをいいます。健康や長寿祈願のために食べられるもので、ムーチーを食べるのは旧暦の12月8日、つまり新暦の1月下旬ごろとなります。2018年のムーチーの日は1月24日となっています。このころの時期を沖縄では「カーサムーチー(鬼餅寒)」と呼んでいます。
さて、ウィキペディアで「ムーチー」について見てみると…
「鬼餅」の由来は沖縄本島の民話による。 その内容は、昔、首里から大里に移り住んだ男が夜な夜な鬼になって人畜を襲うことから、その男の妹が憂いて、鉄釘入りのムーチー(鉄の塊とする場合もある)を兄に食べさせ、弱ったところを海に蹴り落として殺したというものである。 このように、鬼退治にムーチーが使われたことから「鬼餅」と呼ばれることとなった。
というふうに、これだけでもなんとも恐ろしい内容となっています。鬼となった兄を鉄入りの餅で弱らせて倒した!ということでムーチーは「鬼退治の餅」ということなのですが、ここに至るまでの過程が生々しく恐ろしいものなんです…。
ムーチーのこわ~い昔話…
昔々、ある兄妹が首里の金城に住んでいました。
兄はのちに大里に移り住みましたが、そのころから洞窟にこもって動物や人を捕まえて食べるようになってしまったのです。 動物や人を喰らうようになり、だんだんと「鬼」になっていったと言われる兄。 そのことが噂されて、妹の住んでいる金城にも伝わってきてしまいました。
「これはいけない」と思った妹はすぐに兄のところに行くと、兄は妹を迎え入れて夕飯を一緒にとることに。
兄が作っていた鍋のなかには、ぐつぐつと人の足や手が入っているのが見えました。 噂は本当だった…ということがわかり、このままでは私まで殺されて食べられてしまう!と感じた妹は「用を思い出した」と、いったんその場を去ります。 兄を殺さなければ、自分も周囲の人間も食べられてしまう。
そうして、兄を殺す方法を考えました。
次の日、妹は再び兄のもとを訪れます。 「今日はいい天気だから、おいしいお餅をたくさん作ってきたので外で食べませんか?」と誘い出します。
崖っぷちに座り込んだふたりは餅を食べ始めます。 このとき妹が用意してきた餅ですが、兄のぶんは砂や石・釘や鉄のかたまりが入っているものを、自分はおいしいお餅を食べました。 兄は異物が入っていることで食べにくそうにしていましたが、妹を見るとおいしそうにお餅を食べているのが不思議でなりません。
「妹よ、どうしておまえはこんなに硬い餅を食べられるのだ?」 「あらやだお兄さん、おいしくてやわらかいお餅ですよ」
兄はますます不思議です。 どうしてこんな硬い餅を食べられるんだ…?と妹の方を見ていると、足を立てて座っていた妹の下半身がふいに見えました。 すると、妹は着物の下に何もつけていないではありませんか!
よくよく見てみると、妹のそこには縦に開いた口のようなものが見えます…。
「妹よ、なぜおまえは口がふたつもあるのか?」と聞く兄。 すると妹はこう答えました。
「上の口は餅を食べる口、下の口は鬼を食べる口です」
そう言って着物をたくしあげ、兄に迫ります。 するとびっくりしてしまった兄はそのまま後ずさりし、うしろの崖に足を滑らせて落ちて死んでしまいました。
―――それからは村に鬼もいなくなったので動物や人が食べられることもなくなり、人々は幸せに過ごしましたとさ。
…一般的な昔話では考えられない内容ですよね。鬼が人間を食べるとか、ラストには女性の陰部が出てきたりそれを見せて鬼に迫る…というシーンには驚きです。こちらの昔話は衝撃的な内容が多い為、子供向けの絵本ではある程度変更が加えられています。以下の動画は子供向けのものとなっているので、上記内容と違いがあります。
鬼退治の餅=ムーチー
この話から、鬼退治に使われたお餅は鬼除け、つまり厄除けとして語り継がれるようになった…ということなんです。よくよく見てみると、サンニンに包まれたお餅はなんとなく女性の…そんな形をしているような。
沖縄でいまも食べられているムーチーは、スタンダードな白色のお餅はもちろんですが、黒糖を使った黒いお餅、紅芋粉を使った美しい紫色のお餅も。由来はこのように恐ろしいですが、味はとてもおいしいですし今でも縁起物として食べられています!
実はこんな話があったんだ…ということを知っておくと、沖縄でムーチーを食べるときにふと思い出すかもしれませんね…。