今、俳句がブームになっていますが、沖縄には、「琉歌」と呼ばれる伝統的な歌があります。俳句の作り方とは、また違った魅力のある琉歌。ここでちょっと、沖縄の琉歌の魅力について紹介してみたいと思います。
沖縄の心・琉歌って一体何?
琉歌は、沖縄諸島及び奄美群島・八重山諸島などで伝承される歌謡。
一般的には「ウタ」と呼ばれていますが、奄美諸島では、「島唄」と呼ばれています。そんな沖縄の伝統的な歌謡である「琉歌」には、こんな特徴があるんです。
琉歌の特徴とは?
琉歌の基本は、「八・八・八・六」で歌われます。そのため、「サンバチロク」とも言われています。その、サンパチロクで作られるのが、琉歌の短歌形式の基本です。
全部で30音の唄なのですが、「八八、八六」で前半と後半に分けて歌うのが特徴です。
古典音楽の基本に見られる琉歌
また、古典音楽でも、琉歌の特徴を見ることが出来ます。古典音楽で見られる琉歌では、「七五、八六」または「五五、八六」の形式がよく見られます。
長歌形式もある
長歌形式の場合は、大きく分けると「長歌」「つらね」「木遣り」「口説」の四つがあります。
長歌は、「八八八八」と連続し、最後の句のみ「六」で締めます。つらねも、ウタの作り方は一緒です。ただし、長歌よりも長いものが「つらね」と呼ばれています。木遣りに関しては、「八八八八…」と続くのですが、八音の間に囃子が入るのが特徴です。
ここまでの説明でもわかるように、「長歌」「つらね」「木遣り」は、長さや囃子の有無で違いが分かるようになっています。
これに対して口説は、「七五」調で構成されます。そのため、和歌のような印象が強いのが特徴です。もともと中世日本の伝統芸能であった「口説き」が沖縄に伝わり、それが定着して受け継がれるようになったといわれています。
有名な女流歌人をご紹介
琉歌の女流歌人として有名なのが、「吉屋チルー」と「恩納ナベ」です。
吉屋チルー
1650年に生まれた吉屋チルーは、琉球王国の遊女であったという記録があります。
貧しい農民の娘として生まれたチルーは、わずか8歳で那覇の遊郭へ、遊女として売られました。
遊郭へと売らえていく途中、現在の嘉手納町と読谷村の間にかかる「比謝橋」で詠んだといわれる歌は非常に有名で、現在では、比謝橋の近くに、この時、チルーが歌ったとされる歌の歌碑が建てられています。
恋に生きた女流歌人・チルー
チルーは、18歳の時に自ら命を絶っています。この自殺の理由については、諸説あるのですが、一説によると、かなわぬ恋に失望したことが原因だったといわれています。
チルーは、遊郭の客であった「仲里の按司」と恋仲になったといわれているのですが、美しいチルーは、黒雲殿と呼ばれる大金持ちに身請けされてしまい、添い遂げることが出来なくなります。想いを寄せる人のそばで生きることが出来ないわが身を憂い、食を絶って、その命を絶ったというのが、チルーの最期であったといいます。
恩納ナベ
吉屋チルー同様、農民の娘として生まれたのが、「恩納ナベ」です。琉球王国時代に活躍した女流歌人で、農民の心情や、情熱的な恋の歌を力強く詠むのが特徴で、吉屋チルーと並び、沖縄の女流歌人として今も語り継がれています。
恩納ナベは、多くの男性との恋の伝説を数多く残していることでも有名な女性。「隣の間切に恋人がいた」という話や、「馬車曳きの男性と結婚した」など、様々な話が言い伝えられています。
今も、琉球古典舞踊の演目として人気のある恩納節の歌詞には、恩納ナベが詠んだ歌があります。当時、若者たちの遊びといえば、野原や海辺に若い男女が集まり、酒を飲みかわしながら歌や踊りを楽しむ「毛遊び」という集まり。
これは、沖縄各所で昔から行われていた若者の慣習だったのですが、結婚前の若い男女が集まって行うことから、何度も琉球王府によって禁止令が出されたものでもありました。もちろん、恩納ナベもこの毛遊びに興ずる1人であり、そのことを禁止する琉球王府に対して、反論を込めた歌を詠みました。これが、有名な恩納の番所にある松の木の話です。
恩納ナベに関する資料を集めた「恩納ナビー資料館」
恩納ナベが生まれ育った恩納村には、現在、恩納ナビー資料館という、施設の資料館があります。
情熱的な恋の歌も魅力の恩名ナビですが、豊かな恩納村の自然を雄大に歌った歌も多数あり、そうした恩納ナベに関する貴重な資料を集めた恩納ナビー資料館は、地元ではちょっと知られた穴場スポットとなっています。
恩納ナビー資料館
- 住所:沖縄県恩納村安冨祖18番地
- 営業時間:10:00~18:00
- 定休日:月曜日
- 入場料:200円
- 駐車場:あり(無料)
俳句とは一味違う琉歌を楽しんでみて!
いかがでしたか?
俳句とは少しだけ異なる琉歌ですが、使える文字数が増えるだけに、俳句よりも内容を濃くすることが可能なんです。
俳句を嗜まれている方は、ぜひ琉歌にも挑戦してみてくださいね!