沖縄を歩いていると、本土では当たり前のように見かける自転車を、ほとんど見かけません。車社会といわれ、毎日の交通渋滞がひどい沖縄なのに、どうして渋滞の救世主である自転車の人気が低いのでしょうか。
沖縄で自転車に乗るのはあり?なし?
本土であれば、大型ショッピングセンターの一角に自転車屋があるのはもちろんですが、それ以外にも街の小さな自転車屋さんがいくつもあるもの。
だから、パンクやブレーキなどの修理だけでなく、手軽に空気を入れてもらいに立ち寄るなど、結構な頻度でお世話になるものです。でも、沖縄では、そんな便利な街の自転車屋さんの姿がない!
沖縄県の中心都市でもこれしかない!
沖縄県の中心都市といえば、南部エリアは那覇市、中部エリアなら沖縄市があります。
それぞれ人口も、那覇市は約32万人、沖縄市は約14万人で、県内で1位と2位の人口密度を誇っています。なのに、自転車屋はそれぞれのエリアでこれだけしかありません。
那覇市内の自転車屋さん
- 沖縄輪業株式会社
- 那覇市前島にある自転車屋です。南風原町に、南風原店があります。モノレール「美栄橋駅」から58号線に向かって歩いていくと、すぐに見つかります。そのため、レンタサイクル利用希望の観光客が、とても目立ちます。
- バイスクルキッズ
- 那覇市にある奥武山公園の近くにある自転車屋さんです。場所柄もあって、アスリート系のサイクリング愛好家が集まるお店です。
- ハシカワサイクル
- 昭和31年創業で、現在は2代目。なんとこちらのオーナーは、沖縄県自動車組合副理事長&沖縄県トライアスロン連合副理事長を務めています。お店そのものはコンパクトですが、お店の外装も個性的で、結構目立っています。
- イオン那覇店にあるサイクルショップ
- イオン那覇店には小さいですが、イオン直営の自転車屋さんが入っています。お店は、1階の外( 通堂 小禄本店向かい)にあり、店内からは直接行くことができません。その為、気が付かない方も多いようです。
沖縄市内の自転車屋さん
- サイクル館
- 沖縄市内に、泡瀬店・知花店・照屋店の3店舗を展開しています。何しろ、市内に3店舗構えているため、この地域に住む地元民にとってはなじみの深い自転車屋さんです。
- 安慶田サイクル
- 創業41年!地元密着型の自転車屋です。こちらは、庶民になじみのある、「街の自転車屋さん」といった感じです。
那覇市と沖縄市、合わせて46万人もの人が生活しているにもかかわらず、自転車屋さんはこれだけなんです!
「学生の愛車」「主婦の足」であるはずの自転車も、沖縄では不人気です
学生時代、関東に住んでいた私も、高校3年間の愛車は、前にカゴが付いたママチャリ。最寄りの駅から学校までは、同じ制服の学生が、列を作ってひたすらペダルをこいでいました。
さらに、夕方になれば、前と後ろに子どもを座らせて、カゴにはパンパンになった買い物袋を詰め込んで走る主婦の姿が道路にあふれるのも、これまたよく見る風景。それだけに、マンションやアパートには、必ず自転車置き場があって、駐車場同様、各家庭によって停める位置も決められていました。
それなのに、沖縄ではほとんどこの風景が見られません!でも、そこには、きちんとした理由があるのです。
厳しすぎる気象条件
沖縄は、「南国リゾート地」として全国でも有名です。ですが、この「南国リゾート」という表現は、あくまでも県外に住む観光客向けのキャッチコピー。地元民にとっては、「地獄の暑さが1年のうち9カ月以上も続く島」でしかありません。
殺人的な日差しと猛烈な湿度、さらには、夏になると突然襲ってくるスコールと、海から吹き付ける強風。これらにさらされながら、笑顔で自転車をこぎ続けるなど、所詮無理なのです。
塩害で自転車がすぐにボロボロになる
沖縄は、周りを海で囲まれていますから、どこに住んでいても塩害の被害にあいます。特に台風が襲ってくると、屋外にあるものはほぼ、塩をかぶります。
ですから、車やバイクですら、すぐにサビだらけになります。もちろん、自転車だって例外なはずはありません。
しかも、乗用車の駐車スペースは確保されていても、屋根付きで自転車を停めることが出来るスペースの確保は、ほぼ皆無。常に沖縄の大自然を、自転車そのものが、体を張って受け止めるしかないのです。
もちろん、マンションによっては屋根付きの自転車置き場を設置しているところもありますが、一般的なアパートなどは駐輪場を準備していないところも、まだまだ多いのです。
安全に自転車を利用できる環境が整っていない
沖縄は、鉄道がとおっていません。唯一、公共交通機関として車以外で存在している「沖縄都市モノレール ゆいレール」も、「那覇空港駅」から首里城周辺にある「首里駅」までという、非常に限定したエリアしか運航していません。
そのため、車以外の移動手段を選択することが出来る人は、かなり限定されてしまいます。
しかも、モノレールを普段の通勤・通学で利用する場合でも、自転車を利用する人はかなり限られます。さらに駅周辺では、自転車置き場が整備されていないところも多くあり、自宅から駅までの移動としても自転車の利用は不便なのです。
問題は、これだけではありません。
交通網がしっかりとしている地域は、那覇市内などのように、基本的に都市部です。ですから、都心部から離れるほど、不便になります。便利といわれている都心部であっても、車道には自転車専用道路はありません。しかも、歩道は歩行者優先の為、自転車は基本的には車道を走行する決まりになっています。
そのため、学生や主婦が安心して自転車を利用することが出来る環境は、残念ながら今の沖縄にはないのです。
県外では、パトロール中の警察官は自転車を利用してる光景をよく目にします。ですが、沖縄では自転車に乗っている警察官は見かける事はありません。警察官の方でも、自転車は利用していないのです。
那覇市の国際通り周辺では、外国人が自転車を乗り回している
ウチナンチュにとっては、社会人になったら一人に1台必要な乗用車ですが、那覇で暮らす外国人にとっては、逆に車は負担が大きいだけで無駄な存在。
しかも、生活圏が狭いエリアで限定されている場合は、バスを使うよりも、自転車を使った方が、はるかに便利です。そのため、那覇市の国際通り周辺では、アジア系の外国人が、マイ自転車で走り回る姿があちこちで見られます。
アジア系外国人観光客にはレンタサイクルがブーム
最近増えてきたのが、アジア系外国人観光客が自転車に乗る姿。特に観光スポットである那覇市の国際通りでは、「ママチャリ」をレンタルして、市内観光を楽しむ観光客が急増しています!
たしかに、国際通り周辺のコインパーキングは、不便なうえに高い!しかも、気になるお店があっても、すぐに車を停めて店に立ち寄るということもできません。
ですが、もともと、沖縄は自転車に縁がない土地。そのため、人でごった返している国際通りの狭い歩道をすり抜けながら走っていく自転車や、歩道を防ぐようにして停める自転車に、危険を感じることも増えてきています。
海外の利用者が増えてきた今、自転車を貸せる側も、しっかりとルールを教えていく義務があると言えます。
自転車は軽車両です。区分的には、自転車は車の仲間という事になるので、しっかりルールを守る事を貸せる側は教えるようにしましょう!
安全・便利に利用できる環境が整えば普及するかも
「車社会だから仕方ない」という一言で片づけてしまい、交通渋滞の慢性化を、暗黙の了解で受け流してしまっている私たち。
交通渋滞の解消には、自転車の活用も効果的なのはわかっているのですが、それがなかなか実現できないジレンマがあります。もっと安全に、便利に活用できるようになれば、もっともっと自転車を利用する人も増えてくるでしょう。
自転車普及への道のりは・・・長く険しそうです。
なぜなら、沖縄県は、自転車屋さんの数が日本一少ない県だからなのです。