沖縄の財テクの一つに、軍用地売買があります。確かに、米軍基地の75%があるといわれている沖縄。借地料は毎年少しずつ値上がりしている現実を知れば、魅力的な投資物件とも言えます。果たして、その実情とは?
そもそも軍用地とはいったい何?
そもそも軍用地とは、いったいどういうものなのでしょう?
軍用地の契約相手は国
沖縄には、数多くの米軍施設がありますが、この施設内で使われている土地は、国が所有していない土地が数多くあります。このような土地のことを軍用地といい、それぞれの土地には、民間の所有者がいます。
この所有者に対し、国が借地契約を結ぶことによって、米軍施設として土地を提供しています。もちろん、国は、ただで所有者から土地を借り受けているというわけではありません。
土地によっても借地料は異なってきますが、軍用地全体の借地料として、国は、毎年900億円の借地料を支払っているといわれています。
軍用地は米軍基地だけではない
沖縄の軍用地というと、米軍基地に提供している土地のことだと思われがちですが、実際には、米軍基地の土地だけが軍用地売買の対象ということではないのです。
たとえば、那覇空港に隣接する航空自衛隊の那覇基地。この那覇基地内の土地も、軍用地の対象となります。その他にも、那覇市鏡水の陸上自衛隊・那覇駐屯地内の土地も軍用地ですし、沖縄市にある陸上自衛隊・沖縄訓練場の土地も軍用地です。
さらに軍用地の対象には、県企業局施設用地も含まれます。
そもそも企業局とはどんな事業をするのか
わが国では、ライフラインに直結する公共性の高い事業について、地方公共団体ごとに企業を設置・運営することが義務付けられています。
企業局で行う事業には、給水事業・電気事業・交通事業・ガス事業などがあります。
沖縄では、水道水と工業用水の2つの水道事業を県が運営しています。ですから、沖縄の企業局施設といえば、浄水場となります。
沖縄県内には、西原浄水場、北谷浄水場、石川浄水場、久志浄水場、名護浄水場の5施設があります。また、これらの浄水場とは別に、北谷町には、海水を真水に変換する海水淡水化プラント設備「海水淡水化センター」があります。
なぜ沖縄では軍用地ビジネスが成り立つのか
軍用地には、米軍基地として提供されている駐留米軍用地だけでなく、自衛隊基地及び県企業局施設用地も含まれますが、売買の対象として多いのは、やはり圧倒的に駐留米軍用地の方です。
2012年3月時点での沖縄県内の駐留米軍用地は、231,763㎢。これは、沖縄本島の面積の10.2%にあたる広さです。
でも、この広さだけが、軍用地ビジネスを成り立たせている理由ではありません。
沖縄の軍用地のほとんどは、国有地ではない
米軍基地は、日本全国に存在します。ですから、駐留米軍用地は、沖縄以外にも存在するわけです。ところが、この軍用地ビジネスが沖縄のように盛んにおこなわれているかというと、そうではありません。
実は、ここにこそ、沖縄特有の事情があります。本土の軍用地の所有者は、基本的に国です。国有地を駐留軍用地として米軍に提供しているわけですから、第三者に対して借地料が発生するということはありません。
これに対して沖縄は、駐留軍用地の6割強が、沖縄県または各市町村有地、民間地です。だからこそ、沖縄では軍用地ビジネスが成立しているのです。
軍用地の単価は毎年必ず値上がりする
軍用地の単価は、土地の価値だけではありません。毎年12月に国と一般社団法人沖縄県軍用地主連合会(土地連)の間で、借地契約に関する話し合いが行われます。
この話し合いでは、借地単価に関する議題もあります。そのため、軍用地の借地単価は、必ず毎年上昇するようになっているのです。
返還された後も価値が上がる軍用地
沖縄にある軍用地は、返還に向けての動きがあります。現在、牧港補給基地、普天間飛行場、那覇港湾施設、キャンプ瑞慶覧の一部の4か所の軍用地が返還される予定になっています。
返還されれば、国との借地契約は解消されるので、価値は下がるのかと思われがちですが、返還後の跡地計画とも深く関係している軍用地。そのため、土地によっては、返還後の方がさらに資産価値が高まるとみられるものも多いのです。
牧港補給基地の場合
牧港補給基地の跡地には、標高10m未満の低地部を産業振興地区、標高20m以上の高台部を住宅地区などにするという、跡地利用計画が進んでいます。
低地部と高台部の面積は、それぞれ約134haと約140ha。特にこの地域は、那覇都心部へのアクセスがしやすいという立地条件もあり、住宅地としても人気があるエリアです。
さらに、軍用地主への配慮として、公園緑地を一定規模以上配置するということも跡地利用計画では課題として検討されていたり、返還花鶏利用を目的とした買い手が続々と増えていることもあって、返還が予定されてからも、継続して土地を所有し続けるという地主が多いです。
普天間飛行場
辺野古への移設問題で大きく揺れる普天間飛行場ですが、実際に土地が返還されるまでは、あと15年以上かかるのではないかという見方が強いです。
また返還後も、国や県が土地の契約に関して継続して関わってくるとみられるため、返還が予定されている今でも、人気がある物件となっています。
那覇港湾施設
1974年に移設条件付き全面返還が日米で合意されたにもかかわらず、40年以上たってもなかなか返還に向けての動きが進展しないのが那覇港湾施設です。
2001年に浦添市が代替施設受け入れを表明したことによって、全面返還に向けて大きく動き出すかと思われましたが、合意から15年以上たった今でも、代替施設の完成及び全面返還のめどはたっていません。
しかしこの土地は、那覇空港からも近く、他の軍用地と比べると倍率も低いことから、近年、軍用地売買で人気が高まっています。
キャンプ瑞慶覧
キャンプ瑞慶覧の返還跡地計画には、巨大な国際医療拠点ゾーンが設置される案が進んでいます。
現在、西原町にある琉球大学医学部および琉球大学附属病院が、返還後の国際医療拠点ゾーンに移転される予定。
さらにこのエリアには、体にメスを入れなくてもがんの治療を行うことが出来る「重粒子線治療施設」の設置計画が進んでいます。そのため、返還後もこのエリアの土地単価が上がるとの見方が強いです。
返還しても跡地利用特別措置法によって支払われる保証金
平成24年4月1日に施行された「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の促進に関する特別措置法」(以下「特別措置法」とする)のことを、みなさんはご存知でしょうか?
これは、返還された後も、引き続き国から補償金が毎年支払われるということを明記したもので、その金額は、「返還日に属する年度に国が当該土地について支払った賃借料」(特別措置法第十一条より引用)とあります。
実際に返還合意がなされてから40年以上たっても返還されない那覇港湾施設の例を見ても、返還が実施されるまでには長い時間が必要であり、土地が完全に地主に返還されるまでには、さらに多くの時間がかかります。
これも、返還が予定される軍用地であっても土地を手放す地主がほとんどないという理由にあるといえます。
2019年の夏オープン予定となっている「サンエーパルコ」も、この牧港補給基地の跡地に建つ予定となっています。