沖縄への移住を考える人の中には、漠然と「移住する」ということだけが決まっているという人も多いはず。でもそれだと、必ず失敗します。移住してから何をしたいのかで、移住を決断するタイミングは違うのです。
移住の目的にはいろいろある
沖縄に移住をしてみて成功した人には、必ず共通していることがあります。それは、移住後の目的です。
ただ漠然と沖縄に移住したいと思っている人の多くは、3年以内に断念します。それは、沖縄があまりにも本土と環境が異なっているからです。
本土とは異なる!?沖縄の衣食住の環境
まず知っておかなければいけないのは、衣食住の違い。食べ物には、沖縄独特の食べ物がたくさんあります。本土では町のスーパーで簡単に手に入るものも、沖縄では専門店やスーパーでなければ販売していないものもよくあります。
それに、着るものも、沖縄と本土ではかなり違います。年間通して高温多湿な沖縄県では、真冬にあたる2月であっても気温が15度を下回ることはほとんどありません。しかも、冬服が必要になるのは、12月から2月までのわずか3か月間のみ。これだけでも、大きな違いです。
特に大きな違いは住居!
さらに問題なのは、住まい。
台風の接近回数が非常に多い沖縄では、基本的に台風対策がしっかりとした家でなければ危険です。
賃貸住宅であれば基本的に装備されていますが、新たに住宅を建てて移住することを考えているのであれば、沖縄仕様の住宅でなければいけないことも知っておく必要があります。
このように、移住をするだけでも沖縄では様々な違いが起こるわけですから、暮らし方に目的がなければ、さらなる沖縄ならではの事情に気持ちが追い付かなくなります。
「退職後に沖縄移住」のリスク
漠然としたまま退職を機に沖縄移住をしようと考えている人は、ちょっと危険です。
よく沖縄のことを「年中暖かくてのんびりとした南の島」と表現しているのを見かけたり耳にしたりするのですが、それはあくまでも、沖縄の限定的な表現にすぎません。
避寒を目的に沖縄に家を購入する人もいますが、その多くは、冬の期間限定の滞在です。南国ですから冬は暖かく過ごすことができるのですが、その反面、夏の暑さは異常です。
しかも、3月になれば海開きが始まる沖縄では、2月下旬から日によっては半袖で過ごすことができます。この状態が、12月初旬まで続くのですから、ただの避寒目的で沖縄に移住するのであれば、必ず失敗します。
ほかにも、目的があいまいなまま退職後に沖縄へ移住してしまうと、こんなトラブルが起こる可能性があります。
友達ができない
沖縄の方言は、非常に独特です。若者世代の間では、方言が話せない人のほうが多くなっていますが、一定の年齢以上になると、やはり沖縄の方言のほうが主流になります。
ですから、老人会の集まりやサークルに参加してみても、言葉が通じず、コミュニケーションがうまく取れないということも起こってしまいます。
定年後は、どのように過ごすにしろ、人とのコミュニケーションが社会とのつながりとなります。それだけに、言葉の問題を抱えたままでは、あたりさわりのない挨拶はできても、一緒に趣味やおしゃべりを楽しむ友達はなかなかできません。
定年前に沖縄に友人を作ろう
せっかくの沖縄への移住なのですから、快適かつ楽しく定年後の生活を過ごすためにも、移住前に沖縄に住む友人を作ることが大切です。沖縄に住む友人ができれば、様々なことをその友人から教えてもらうことができますし、新しい友人も、その人を通じて紹介してもらうことができます。
定年を機に移住をしたいのであれば、準備の第一歩は、「沖縄に住む友達を作る」こと。これがクリアできないうちは、定年後の移住計画は、一度見直してみたほうがよいでしょう。
仕事を見つけるのは難しい
本土と比べて、定年後でも働くことができる場所は、非常に限られています。那覇市などのように都心部であれば、本土系列の企業も多いので、仕事探しは比較的スムーズですが、それでも、本土と比べればかなり数は少ないです。
かといって、新たに自分で仕事を見つけるにも、横のつながりを非常に大切にする沖縄では、いくら魅力的な事業であっても、収益を確保するまでは非常に大変です。
移住後も年金と預貯金だけで十分に暮らしていけるだけの経済力があるなら別ですが、そこに不安があるのであれば、移住のタイミングを早めて、収入の基盤を確保することが大切になります。
「どうせいつか帰るんでしょ」と思われている
これまで数多くの人が、沖縄へ移住してきました。でも、その数と同じくらい、移住に失敗して本土に帰って行った人もいます。
そのため、沖縄人の間では、本土の人との付き合いに一線を引いている人も少なくありません。沖縄人の心のバリアを解いていくのには、移住した人のバイタリティも必要ですが、それと同じくらい時間も必要です。
「勢いで沖縄移住」のリスク
若い世代の沖縄移住に多いのが、沖縄のイメージと若さゆえの勢いだけで沖縄移住を決断してしまうこと。実際に私も、このタイプの移住者をたくさん見てきました。
でも、そのうちのどれくらいの人が残ったかというと、ほとんどいません。長い人で3年、早い人では1年もたたずに本土に帰ってしまいました。
帰って行った移住者たちの多くは、沖縄を去るときに、「思っていたのと現実は違っていた」と言います。このセリフには、沖縄のことを理解しようとしないまま、生活をしていたことが原因にあります。
沖縄に住むなら、沖縄の現実を見なければ暮らせない
沖縄が本土のメディアで取り上げられるのは、リゾート地としての沖縄の姿か、基地の街としての沖縄のどちらかです。もちろん、この2つの側面は、沖縄を代表する大きなもの。ですが、沖縄の現実のほんの一部でしかありません。
たとえば、収入に関する問題。若い世代が沖縄で移住するのには、やはり、生活の基盤となる経済力が必要になります。でも、沖縄の平均所得は、一般企業で働くことができたとしても、本土企業と比べれば下がります。
実際に私の場合、移住後も移住前と同じ職種の仕事に就いたのですが、移住後は、移住前の平均月収の半分程度まで下がりました。給与面だけで見れば、生活ができないレベルですが、考えかえたさえ変えれば、生活はできるようになります。
ただし、この現実に対してどうやって自分の中で折り合いをつけるかが問題。自分で納得したうえで、新たな生活をスタートさせなければ、ただむやみに転職を繰り返すだけ。いずれ、その生活に疲弊し、移住を断念してしまうはずです。
誰とでも友達にならなければ暮らせない
本土からの移住者が多い沖縄では、沖縄人の友人を作らなくても、沖縄で生活していくことはできます。沖縄には移住者だけの集まり(サークルのようなもの)も存在しますから、そのつながりだけで生活するということも不可能ではありません。
実際に、私も移住したばかりのころは、移住者のみの集まりによく参加していました。
でも、移住者だけの集まりに参加する人の多くは、公務員の家族が多く、沖縄での生活も、夫の転勤が決まればいつでも終わってしまうというのが根底にあります。そのため、本気で移住をする人は、ほとんどこの集まりにはいません。
だから、長く沖縄で暮らしていくためには、どうしても沖縄の友人を作らなければいけなくなります。いずれにしても、相手から声をかけてもらうのを待っていたのでは、沖縄人の友達を作るのは難しいでしょう。
田舎に行くほど仲間に入るのは難しい
田舎に行けば行くほど、沖縄人が持つ本土人への心の壁は高くなります。
こうした地域では、集落の行事も多く、それらの行事には、時間の拘束が伴うものも結構あります。それでも、地域の行事や仕事に積極的に関わっていかなければ、地域の人の輪の中に入っていくことは難しいです。
しかも、地域に積極的に関わったからといって、地元のコミュニティーの中に入れるかというと、そう簡単なものでもありません。
「地元のことは地元がやらなければどうする?」という意識が強いのも、沖縄の地域コミュニティーの基本にあります。(都心部では、その傾向はほとんどありません)
だからこそ、気長に、じっくりと沖縄の人と付き合うという気持ちがなければ、地方での暮らしは成立しません。
沖縄への移住は若いほうが得?それとも定年後?
沖縄移住に対する厳しい見方ばかり紹介してしまいましたが、それぞれ特徴の違うリスクがあることが分かっていれば、成功のポイントもわかってきます。
そのうえで、あえて移住のタイミングについて考えるとすれば、移住後の暮らし方をどうするのかがポイントになります。
仕事中心に沖縄で移住するなら若いほうが得
沖縄で仕事をしながら、沖縄での暮らしを楽しみたいなら、少しでも早く沖縄で移住を始めるほうが、絶対に成功します。
仕事を通して、沖縄人の友人は自然とできますし、友人を介して沖縄の暮らし方を知ることもできます。さらに、子育てを通じて知り合う仲間も増えますし、活動の範囲も子供経由で広がっていきます。
多少の給与の違いは、先ほども紹介した通り、ある程度の覚悟が必要ですが、それさえあればなんとかなるのが沖縄の暮らし。
誰もが働きながら子育てをし、それなりに不満がありながらも、仲間と一緒になんとか日々を過ごしていく。これができるのも、若い世代だからこそであり、等身大の沖縄移住生活だといえます。
趣味を中心に沖縄移住するなら定年後のほうが得
沖縄に何度も足を運んでいるうちに、いつかこの島で暮らしてみたいと思うようになったのであれば、定年後であっても成功します。
ただし、リスクは前出の通り。だからこそ、「何度も沖縄に足を運ぶ」という準備が必要になります。
ただ、移住をする前に知っておいてほしいのです。
沖縄人は、基本的にシャイです。そのうえ、情が深いです。だから、人との別れを経験することに、ドライになり切れないところがあります。長く沖縄に移住してみて思うことですが、その別れのつらさが、移住者に対する心の壁になっているのだと感じます。
そのことを理解すれば、もともと人が大好きな沖縄人ですから、これまで知り合ってきた人以上に深い付き合いができるのも、沖縄人だからこその特徴。
それゆえに、定年を迎えるまでに様々な人間模様を見てきた経験が、じっくりと時間をかけて人間関係を築く力となるはずです。そう考えれば、時間の制約のない定年後のほうが、趣味を通して日々を過ごす暮らしの実現に向いています。
理想を追求せず、沖縄の時間を楽しむ余裕をもつ
移住は、沖縄に限らず、どの地域に住むことになったとしても人生の一大決心であることに変わりはありません。
でも、失敗したくないからと言って自分の固定概念だけで暮らそうと思っていると、きっとあなたの沖縄移住は、窮屈なものになってしまいます。
どうせ、はるか遠くの沖縄に移住をするのです。今までの人生の中では想像もできないような、まったく新しい沖縄バージョンの理想を、沖縄の暮らしの中で見つけてください。そうすれば、あなたの沖縄移住もきっと成功するはずです。