毎年10月17日は、沖縄そばの日。県内の沖縄そば屋では、沖縄そばイベントとしてお得なメニューが登場するなど、県民にとっては嬉しい日。知っておくと得をする、「沖縄そばの日」に注目してみます。
沖縄そばは蕎麦とは別物!?沖縄そばの秘密
沖縄そばは、「そば」という名がついていますが、「蕎麦」とは別物です。
今では、その違いも含めて全国的にも認知が広がっていますが、かつて、沖縄そばなのに「そば」と呼ぶことが出来なくなった時代があります。
“そば”なのに“そば”と呼べない時代
沖縄そばは、昔から沖縄の食文化に根付いた伝統的な食べ物です。ですから、沖縄県民にとっては、「そば」といえば沖縄そばのことを意味し、「蕎麦」は和蕎麦として区別されていました。
でも、沖縄そばと蕎麦の違いは、麺の見た目の違いだけではありません。
沖縄そばの原料には、蕎麦粉は一切使われていません。そばとは言いつつもそば粉は使用せず、小麦粉を使ってつくられるのが沖縄そばの麺です。このことに、本土復帰から4年経ったある日、公正取引委員会からクレームがつきます。
『蕎麦粉を使っていない沖縄そばは、“そば”を名乗ってはいけない」
公正取引委員会のこのクレームの根拠は、「生めん類の表示に関する公正競争規約」にありました。これによると、「そば」という名称を表示するには、「原料に3割以上の蕎麦粉を使用する」という条件があったのです。
もちろん、これを了承すれば、沖縄の伝統的な食文化は変えられてしまいます。
ただし、「沖縄そば」と名乗るためには、一切蕎麦粉を使わない麺に変えなければいけません。もしも沖縄そばそのものを変えないのならば、「沖縄そば」という名称を「沖縄風中華麺」と変えなければならなりません。
この危機に立ち上がったのが、沖縄製麺協同組合で、当時理事長を務めていた土肥健一さん。彼は、沖縄の伝統食である沖縄そばを守るために、沖縄総合事務局の公正取引室へと駆け込みます。ところが、何度足を運んでも、ここでの交渉は全く進みません。
そこで土肥は、東京の本庁に足を運び、直接交渉に挑みます。危機感をもって何度も説得にあたる土肥さんですが、交渉は難航。それでも土肥さんは、何度も東京に足を運び、数カ月にわたって粘り強く交渉を続けます。
土肥の努力が実ったのは、翌1977年のこと。ここで、条件付きとはいえ、沖縄そばの名称が認可されます。
条件付きの壁
なんとか沖縄そばの名称が認められたとはいえ、あくまでもそれは条件付きのものでした。この時の条件というのが、「沖縄県内に限る」というもの。このままでは、沖縄そばを県外で出すことはできなくなります。
そこで、沖縄製麺協同組合は、条件付き認可ではなく、全面認可を求めてさらなる交渉を続けます。この交渉の場は、その後、公正取引委員会から、全国めん類公正取引協議会へと移されます。そしてここで、沖縄そば存続に向けてある提案が行われます。
それが、「さぬき名産うどん」や「本場出雲そば」のように、「本場沖縄そば」として新たに名称を登録しなおすという裏技。
この提案が認められ、ついに沖縄そばは、「本場沖縄そば」と認証され、認可を受けることが出来たのです。この認可が下りた日が、1978年10月17日。そう、「沖縄そばの日」は、沖縄そばの伝統が全国的に認められた日を記念した日だったのです。
本場沖縄そばの定義
「本場沖縄そば」とすることによって認可された沖縄そばですが、実は、本場沖縄そばと名乗るためには、12の定義を満たしていることが必要なのです。
本場沖縄そばの定義は厳しかった
スーパーでもコンビニでも、沖縄県内では手軽に手に入れることが出来る沖縄そば。県民にとってはあまりにも身近な存在なので、沖縄そばの定義を問われても、よくわからないという人の方が圧倒的に多いはずです。
でも、「本場沖縄そば」と名乗るためには、12の定義をすべて満たしていることが条件であり、その定義が一つでもかけているものは、沖縄そばとは呼べないのです。
その定義は、次の12個です。
沖縄そばの定義
- 沖縄県内で製造されたものに限る
- 手打ち式(または、手打ち式風)のものとする
- 原料は小麦粉とし、タンパク質が11%以上・灰分0.42%以下であること
- 加水量は、小麦粉の重量に対して34~36%とすること
- かん水は、ボーメ2~4度とする
- 食塩は、ボーメ5~10度とする
- 熟成時間は、30分以内とする
- 麺の太さは1.5~1.7ミリ桐刃番手、薄刃10~12番
- 裁断された麺は、茹でる前に必ず手もみ工程を行うこと
- 茹で水のPHは8~9とする
- 茹で時間は約2分以内とし、この時間で十分可食できる状態であること
- 仕上げには、油処理をしてあること
出来立て麺が食べられる沖縄そば屋
与那原そばで使われる麺としても有名な「みつくら製麺所」では、自社工場で作られた出来立ての麺を使った沖縄そばが食べられます。
実はこのお店は、沖縄中央卸売市場内にあるため、市場で働く人が多く利用します。もちろん、市場関係者だけでなく、一般の利用できるので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
みつくら製麺所
- 住所:沖縄県浦添市伊奈武瀬1-11-1(沖縄中央卸売市場内)
- 電話:098-865-2123
- 営業時間:8:00~14:00