沖縄は本土と風習が大きく違うため、嫁ぐ前よりも嫁いでから苦労することの方が実際には多いです。中でも沖縄で古くから「供養ごと」と呼ばれるお墓に関することは家ごとに事情が異なるので、本土の習慣と違うだけでなく沖縄でも一般論が通用しないことが悩みごとの1つに挙げられます。
沖縄のお墓は伝統的なお墓だけでも2種類ある
沖縄のお墓は本土で一般的なお墓の形と違う点は、沖縄に嫁ぐ前でも知っている人は多いでしょう。
本土の墓を「大和(やまと)墓」と呼ぶのに対し、沖縄のお墓は「破風墓(はふばか)」「亀甲墓(かめこうばか・きっこうばか)」と呼ばれる独特の形をしています。
ここまでの違いは沖縄に嫁ぐ前でも勉強して知っているという人が多いですし、墓のデザインの違いなのでそれほど問題にはなりません。
ところが沖縄には「家族墓」と「門中墓」の2種類があり、この違いが本土から嫁いできたときに悩みのもとになります。
本来の沖縄の墓は「門中墓」
沖縄の伝統的な墓は「門中(ムンチュー)墓」です。
門中とは男性(父系)血族・血縁によって繋がった親族集団のことで、沖縄では冠婚葬祭はもちろんビジネスシーンでもかなりの影響力があります。
門中を構成する本来の目的は「祖先祭祀」です。いわゆる「先祖崇拝」という沖縄独自の考え方の原点になるのですが、それらの祭祀で重要な場所となるのが共同墓である門中墓になります。
墓苑で見かける墓の多くは「家族墓」
いわゆる「墓地」と呼ばれる場所に家族単位で購入する墓は、沖縄で「家族墓」と呼びます。
家族墓を購入する理由は様々ですが、近年では門中墓から出てる目的で個別に家族墓を購入するケースも多いです。
沖縄に嫁いで困ることが多いのは門中墓
お墓事情が異なるのは家族墓でも同じですが、家族墓は家族単位の墓なので比較的ルールが緩い傾向にあります。
もちろん嫁ぎ先によっては家族墓でも厳しいルールがあるので一概には言えませんが、問題があっても家族間で解決するので嫁ぎ先の家族との関係が良好であればほとんど気になりません。
ところが門中墓は門中共同の墓なので、お墓に関するルールは非常に厳しいです。
清明祭は時間制
沖縄の墓行事で全国的にもよく知られているシーミー(清明祭)も、門中墓では家族墓とは違ったルールがあります。
門中墓によってルールが違いますが、門中が一堂に会してシーミーをするのではなく家族単位でそれぞれの先祖のための供養として行うのが基本です。
そのため家族単位で供物を準備しお参りしますが、「墓前でピクニック」という沖縄の伝統的な風景は門中墓では基本的に見られません。
門中の規模にもよりますが、非常に大きな門中の場合は墓前でお参りができる時間が家族単位で決められており、シーミーの日には順番待ちの長い列ができます。
ちなみにこのように大きな門中墓の場合、墓前はあくまでも報告のためのお参りで、実際のシーミー行事は実家の仏壇前で行うのが一般的です。
納骨も門中一同が集まる
家族墓では納骨のタイミングは家族で決めてよいことになっていますが、門中墓ではそうはいきません。
門中墓の構造は作られた年式によって違いますが、扉の前に台座があり(昔はなかった)、そこに門番係となった遺骨を納めます。
門番は墓の中でもっとも若い門中が担当するので、直近で納骨された人の骨壺が置かれています。
納骨をするということは門番が交代になりますから、門中墓を開けて門番の場所を開けるのは直近で納骨された人の家族です。
そのため納骨は後日日を改めて行うのではなく、沖縄の伝統的な方法である「葬式当日の納骨」になります。
なお、門中墓を開ける係の家族は納骨の時間までに墓明けの供養をしなければいけませんし、墓明け後も新しい遺骨(遺族)が到着するまで門中墓で待機しなければならないため、日にちや時間をずらすこともできません。
ちなみに門中墓への納骨は門中一族が基本的に立ち会わなければいけないので大きな門中に嫁ぐと非常に大変ですが、お葬式も門中の場合は参加が基本なのでお葬式も大変です。
自殺・離婚・水死などはお墓に入れない
門中墓は未婚の女性でも同じ門中であれば入ることは可能です。ただし入ってはいけない人もいます。
今でも多くの門中墓で納骨禁止とされているのが、死因が「自殺」だった場合です。
門中墓は単に墓地というだけではなく、祖先神という一族の大事な神様が宿る場所と考えられています。その聖なる場所に「人生の寿命を全うしなかった人間を収めるわけにはいかない」というのがタブーとされる所以です。
あくまでも寿命とは平均寿命を意味することで、幼くして病気で亡くなった場合も入れないことがあります。理由は定かではありませんが死因が水死だった場合も、多くの門中墓では入れません。
このようなことが今でも門中墓のルールとして残っていることから、死因が自殺であっても門中墓に入れるために本当の死因を親族に一切話さず葬式をするケースもあります。
女性のみに関するタブーには「離婚して実家に戻ってきても門中墓には入れない」(旦那さん側のお墓に入る為に一度籍を抜けている為)といった事が挙げられます。
こういった様々なタブーの対処方法の一つとして「仮墓」という小さな簡易墓を墓域の脇に作りそこに納骨をして、祖先神に納骨を許してもらえるだけの時間が過ぎるのを待つことも珍しくはありません。
親族なのに冷たいと感じるかもしれませんが、あくまでも門中墓は祖先神をまつるための場所であることから厳しいルールがあります。
タブーであっても門中会議で納骨が認められた場合は納骨できますが、ルールが厳しい門中ほどタブーを覆すことは困難です。
そもそも代々何百柱という一族の祖先の墓でもあるからこそ門中墓にはルールがありますし、門中の結束力は非常に強いため、いさかいを起こさず穏便に済ませるのが門中墓のある家に嫁いだ嫁の務めと思って割り切りましょう。
【まとめ】お墓に関する悩みごとは姑さんに相談すべし!
お墓の事情は沖縄といえども家によって全く違います。
同じ地域に住んでいても門中が違えば門中墓のルールも違いますし、家族墓でも風習に厳しい家では門中墓並みにいろいろな墓行事を行うことがあります。
沖縄出身のお嫁さんだって苦労するのが嫁ぎ先の墓問題なので、墓での悩みごとは周りに相談するのではなく、素直に姑さんに相談するのが1番です。
あくまで一般的な門中ルールであり、親族によっては時代に合わせてルールを緩くしていたり融通が利くところもあります。